児童発達支援・放課後等デイサービスの「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」の算定方法

児童発達支援・放課後等デイサービスの「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」の算定方法
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定は、児童発達支援や放課後等デイサービスを運営している事業者にとって大きな影響を及ぼすものとなりました。

特筆すべき点は、これまでの加算制度が改定され、「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」の2つで評価されるようになったことです。

この記事ではこれら加算の取得要件、最低方法について詳しく見ていきましょう。

専門的支援体制加算/実施加算の制度概要

最初に、専門的支援体制加算/実施加算の制度概要について知っておきましょう。

まず、これまでは次のような制度となっていました。

旧制度

専門的支援加算 児童支援センター(障害児)

・理学療法士等を配置→区分に応じて22~62単位/日

・児童指導員を配置→区分に応じて15~41単位/日

児童発達支援事業所(障害児)

・理学療法士等を配置→区分に応じて75~187単位/日

・児童指導員を配置→区分に応じて49~123単位/日

※専門的支援の強化のため、基準人に加えて理学療法士等を配置している場合

特別支援加算 54単位/回

※ 理学療法士等を配置して専門的支援を計画的に行った場合(専門的支援を加算している場合は算定できない)

これが令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定により、専門人材の活用・ニーズをふまえた計画的な専門的支援を進めるため、「専門的支援加算」「特別支援加算」の両加算が統合されました。

そして「専門的な支援を提供する体制」と「専門人材による個別・集中的な支援の計画的実施」について2段階で評価されるようになったことがポイントです。

新制度

専門的支援体制加算 児童発達支援センター:区分に応じて15~41単位/日

児童発達支援事業所(障害児) : 49~123単位/日

※専門的な支援の強化を行うため、基礎者に加えて理学療法士等を配置している場合

専門的支援実施加算 150単位/回(原則月4回を限度)

※ 理学療法士等により、個別・集団的な支援を計画的に行った場合
・専門的支援体制加算との併算定可能
・利用日数等に応じて最大付き6回を限度(放デイは2回~最大6回を限度)

参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の改定事項の概要について|こども家庭庁

「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」はともに、理学療法士等による支援が必要な就学児への専門的な支援の強化のために、基準人員に加えて「理学療法士等」の専門職員を配置している場合(体制手当)、および専門職員による個別・集団的な支援を計画的に実施した場合(実施手当)に、それぞれ算定するものとされています。

なお、体制加算の要件である理学療法士等は常勤または常勤換算とされていますが、実施加算については常勤・常勤換算ではなく単に配置するのみでも、つまり非常勤でも要件を満たせます。そして「体制加算で配置する専門職員」と「実施加算で支援を行う専門職員」は同一職員でも構いません。

また、表に記載があるとおり、「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」は併用できます。

ただし、双方の算定要件は異なるため注意しなければなりません。

専門的支援体制加算の算定要件

それでは「専門的支援体制加算」の算定要件を見ていきましょう。

体制加算については、理学療法士等による支援が必要な就学児への専門的支援の強化のために、基準人員に加えて「理学療法士等」の専門職員を配置している場合に算定されます。

理学療法士等に含まれる専門職員

ここでいう「理学療法士等」とは、次のような専門職員です。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保育士(※)、児童指導員(※)、心理担当職員(心理学修了等)、視覚障害児支援担当職員(研修修了等)

※保育士・児童指導員は資格取得・任用から5年以上児童福祉事業に従事したものに限るとされています

これら専門職員を、基準人員に加えて常勤または常勤換算で1以上配置している児童発達支援・放課後等デイサービスが、専門的支援体制加算の対象です。

常勤換算の計算

常勤換算の計算式は次のとおりです。

従業者の勤務延べ時間数 ÷ 常勤の従業者が勤務すべき時間数

ただし1週間に「常勤の従業者が勤務すべき時間数」が32時間を下回る場合は、32時間を基本とするとされています。

申請にあたって具体的な計算が必要となる場合は、行政書士などの専門家に相談したほうが安心です。

単位数

「専門的支援体制加算」の単位についても改めて紹介しておきます。

  • 児童発達支援センター : 区分に応じて15~41単位/日
  • 児童発達支援事業所(障害児) : 49~123単位/日

単位数は一般の事業所(一般型)と、重症心身障害児を受け入れる事業所(重心型)などの区分に応じて異なります。主な例は次のとおりです。

区分 専門的支援体制加算(1日につき)
児童発達支援センターで行う場合 定員30人以下 41単位
定員31人以上40人以下 35単位
定員41人以上50人以下 27単位
定員51人以上60人以下 22単位
定員61人以上70人以下 19単位
定員71人以上80人以下 16単位
定員81人以上 15単位
児童発達支援センター以外

障害児(重症心身障害児を除く)の場合

定員10人以下 123単位
定員11人以上20人以下 82単位
定員21人以上 49単位
児童発達支援センター以外

重症心身障害児の場合

定員5人 247単位
定員6人 206単位
定員7人 176単位
定員8人 154単位
定員9人 137単位
定員10人 123単位
定員11人以上 82単位

参考:障害福祉サービス費等の報酬算定構造|厚生労働省・こども家庭庁

専門的支援実施加算の算定要件

つづいて「専門的支援実施加算」の算定要件について見ていきましょう。先ほどよりは要件が増え、主なポイントは次のとおりです。

  • 理学療法士等を配置する
  • 専門的支援実施計画を作成する
  • 支援実施状況を把握し、必要に応じて計画を見直す
  • 計画作成・見直しについては対象児と保護者に説明し、同意を得る
  •  対象児ごと支援記録を作成する

要件が多いため、「支援の計画」「支援の実施」「支援内容の把握・見直し」の3ステップにわけて見ていきましょう。

支援の計画

まず、実施加算も理学療法士等を配置する必要があります。ただし実施加算の要件としては、常勤・常勤換算ではなく単に配置するのみで構いません。(なお、理学療法士等の条件は体制加算と実施加算で同様です)

そして個別支援計画をふまえ、理学療法士等がその専門性に基づく評価・計画に則った5領域のうち、特定(または複数)の領域に重点を置いた支援のための「専門的支援実施計画」を作成し、この計画に基づきて支援を実施していくこととされています。

ここでいう「専門性」とは、次のようなものです。

理学療法士 身体機能・動作の低下に対する訓練など
作業療法士 日常生活動作、コミュニケーション感覚の支援など
言語聴覚士 聞く、話す、読む、書く、食べる訓練など

また、専門的支援実施計画の様式に定めはありませんが、次のような項目の記載が求められています。

  • 当該専門職によるアセスメントの結果
  • 5領域との関係の中で、特に支援を要する領域
  • 専門的な支援を行うことで、目指すべき達成目標
  • 目標を達成するために行う具体的な支援の内容
  • 支援の実施方法 等

参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1(令和6年3月 29 日)|こども家庭庁

ニーズに応じた専門的支援に必要であると考えられる項目については、上記の項目に限らず記載します。また、質の高い専門的支援を計画的に提供するために有効な計画とすることも必要です。(障害特性を踏まえた配慮事項、個別支援計画の支援との関連性など)

また、ここで立てた専門的支援実施計画については、対象児と保護者に説明し、同意を得なければなりません。(この保護者の同意を得た日以降が、実施加算の算定対象となります)

なお、専門的支援実施計画は、個別支援計画とは別に作成しなければならないことも覚えておきましょう。

支援の実施

専門的支援については個別実施が基本とされていますが、個々のニーズをふまえた支援を確保したうえであれば、「5名程度の小集団」または「基準人員を配置したうえでの小集団の組み合わせ」による実施も可とされていることが特徴です。

そして専門的支援の時間については、同日の支援時間のすべてとする必要はないものの、30分以上を確保することとされています。

支援内容の把握・見直し

専門的支援実施加算の算定要件には、「支援の実施状況」「対象児の生活全般の質を向上させるための課題」を把握し、必要に応じて計画を見直すことも含まれています。

計画を見直す場合は、やはり対象児と保護者に説明し、同意を得なければなりません。

また、対象児ごとの支援記録を作成することも要件の一つです。

単位数

専門的実施加算における単位数は、児童発達支援と放課後等デイサービスともに「150単位/回(原則月4回を限度)」とされています。しかし当該事業所における「対象児の月利用日数」に応じ、月の算定限度回数が設定されていることがポイントです。

施設 月利用日数 制限時間
児童発達支援 12日未満 4回
12日以上 6回
放課後等デイサービス 6日未満 2回
6日以上12日未満 4回
12日以上 6回

算定のために必要な手続き

それでは「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」のために必要な手続きについて見ていきましょう。

まず、算定を希望する事業所は、都道府県へ届け出る必要があります。旧加算を算定していた事業所も、再度届出なければなりません。

必要となる書類例は次のとおりです。

  • 障害児(通所・入所)給付費算定に係る制度等に関する届出書
  • 別紙1 障害児通所・入所給付費の算定に係る体制等状況一覧表
  • 別紙2 従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表
  • 別紙● 児童指導員等加配加算及び専門的支援に関する届出書
  • 資格を証明する資料(資格証、修了証、実務経験証明書など)
  • 専門的支援実施計画(実施加算の対象者。様式は任意)

専門的支援実施計画については先述したとおり、加算の算定開始までに保護者の同意を得る必要があります。

加算算定手続きは行政書士に依頼すると安心

児童発達支援・放課後等デイサービスにかかわる「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」について、主な要件を紹介してきました。

それぞれ単純な要件ではないため、ご自身で算定・手続きを進めることは難しいかもしれません。スムーズに手続きを終え算定を開始するためにも、専門家の力を借りることをおすすめします。

社会保険労務士・行政書士松元事務所は大阪府・兵庫県・京都府・奈良県を対象に、「障害福祉サービス開業サポート」を提供しています。改定された「専門的支援体制加算」「専門的支援実施加算」の手続きにお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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