福祉・介護職員処遇改善加算とは?要件や計算方法を解説!

職員の賃金体系を整備したり、研修機会を設けたりした事業所は、「福祉・介護職員処遇改善加算」の対象となることがあります。

しかしこの「福祉・介護職員処遇改善加算」は構造が複雑で、自分の事業所が申請の対象となるのかどうか分からず、困っている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「福祉・介護職員処遇改善加算」の要件や計算方法について解説します。令和6年度以降の改正ポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

福祉・介護職員処遇改善加算の概要

そもそも「福祉・介護職員処遇改善加算」とは、福祉・介護職員の安定的な処遇改善を図るために用意された加算制度です。

職員が働く環境が整備されることはもちろん、福祉・介護職員の賃金改善に充てることを目的に、各事業所の取り組みに応じて加算されます。

そして加算を取得した事業者は、その全額を職員の処遇改善、たとえば「福祉・介護職員の研修機会の確保」「加算の算定額に相当する賃金改善」などに充てる必要があります。

処遇改善に係る加算が一本化された

これまでは「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」など複数の加算制度に分かれていました。

しかし、福祉・介護職員の賃金ベースアップ(令和6年度2.5%、令和7年度2.0%)が実現するよう、令和6年6月からこれら加算が一本化され、新たな「処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)」となったのです。

加算率が引き上げられた

加算制度の一本化に伴い、加算率が引き上げられたこともポイントです。

たとえば令和6年5月までの加算率は、「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」のすべてを合計しても、1.8%〜6.9%でした。

しかし令和6年以降の「福祉・介護職員等処遇改善加算」における加算率は、5.5%〜8.1%とされています。

参考:厚生労働省|「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります

福祉・介護職員処遇改善加算の構造

福祉・介護職員等処遇改善加算(新しい処遇改善加算)は、旧3加算の要件・加算率を組み合わせたうえで、次のような区分に分けられています。

加算種別 加算額
(福祉・介護職員1人あたり)
必要な要件
加算Ⅰ 月額 37,000円相当 キャリアパス要件
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの全て

職場環境等要件を満たす
(平成27年4月以降実施する取組)
加算Ⅱ

(従来の加算Ⅰ)

月額 27,000円相当 キャリアパス要件
Ⅰ及びⅡ

職場環境等要件を満たす
(平成27年4月以降実施する取組)
加算Ⅲ

(従来の加算Ⅱ)

月額 15,000円相当 キャリアパス要件
ⅠまたはⅡ

職場環境等要件を満たす
加算Ⅳ

(従来の加算Ⅲ)

月額 13,500円相当 キャリアパス要件
ⅠまたはⅡ
または職場環境等要件
のいずれかを満たす
加算Ⅴ

(従来の加算Ⅳ)

月額 12,000円相当 キャリアパス要件
Ⅰ・Ⅱ
職場環境等要件
のいずれも満たさない

参考:厚生労働省|「福祉・介護職員処遇改善加算」のご案内

これら加算を取得した事業所は、それぞれの加算相当額の賃金改善を実施することになります。

また、一定の経過措置期間の後、「加算Ⅳ」と「加算Ⅴ」については廃止されることも知っておきましょう。

福祉・介護職員処遇改善加算の算定要件

上記の表のとおり、福祉・介護職員処遇改善加算の算定要件としては次の3つが設けられています。

  • キャリアパス要件
  • 職場環境等要件
  • 月額賃金改善要件

それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。

キャリアパス要件

キャリアパス要件は、次の5種類が定められています。

職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
経験・技能のある介護職員のうち、1人以上は賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること

(小規模事業所などで加算額全体が少額の場合は免除)

サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していること

(福祉・専門職員配置等加算等の届出をしていること)

参考:厚生労働省|「福祉・介護職員処遇改善加算」のご案内、「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります

なお、キャリアパス要件Ⅲのために設ける仕組みの例としては、勤続年数・経験年数・資格の取得状況(介護福祉士や実務者研修修了者など)・実技試験・人事評価に応じて昇給する仕組みが挙げられます。

また、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲについては根拠規定を書面で整備し、すべての福祉・介護職員に周知しなければなりません。

職場環境等要件

職場環境等要件は、賃金改善以外の処遇を改善する取組を実施することを指します。

取り組むべき内容が「区分」として決められており、その中から選択して実施しなければなりません。区分は下記の6つで、それぞれの区分ごと、具体的な内容も決められています。

  • 入職促進に向けた取組
  • 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
  • 両立支援・多様な働き方の推進
  • 腰痛を含む心身の健康管理
  • 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組
  • やりがい・働きがいの醸成

令和7年度(2025年度)以降の条件は次のとおりです。

処遇改善加算Ⅰ・Ⅱを取得したい場合 区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上。必須事項あり)取り組んでいる
処遇改善加算Ⅲ・Ⅳを取得したい場合 区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組んでいる

参考:介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件(令和7年度以降)

なお、処遇改善加算Ⅰ・Ⅱを取得したい場合は、生産性向上のための取組として下記の2つのうちいずれかを実施する必要があります。

  • 厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ又は外部の研修会の活用等)を行っている
  • 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している

月額賃金改善要件

令和6年度については猶予期間として、ここまで紹介した「キャリアパス要件」「職場環境等要件」の2つのみが求められていましたが、令和7年度からは「月額賃金改善要件」を満たす必要もあります。

月額賃金改善要件Ⅰ 新加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上を月給の改善に充てる
月額賃金改善要件Ⅱ (ベア加算未算定の場合のみ適用)
前年度と比較して、ベースアップ等支援加算相当の加算額の2/3以上の新たな基本給等の改善を行う

参考:厚生労働省|「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります

加算額の計算方法

さて、「福祉・介護処遇改善加算」が適用されると、1か月あたりどのくらいの加算額を取得できるのでしょうか。計算式は次のとおりです。

  1. 1か月の総報酬額を算出(基本報酬に加算減算を加味したもの)
  2. 1に処遇改善加算の加算率をかける

計算式そのものはシンプルですが、サービス区分によって加算率が異なるため注意してください。

サービス区分 福祉・介護処遇改善の種別
居宅介護 41.7% 40.2% 34.7% 27.3%
重度訪問介護 34.3% 32.8% 27.3% 21.9%
同行援護 41.7% 40.2% 34.7% 27.3%
行動援護 38.2% 36.7% 31.2% 24.8%
重度障害者等包括支援 22.3% 16.2% 13.8%
生活介護 8.1% 8.0% 6.7% 5.5%
施設入所支援 15.9% 13.8% 11.5%
短期入所 15.9% 13.8% 11.5%
療養介護 13.7% 13.5% 11.6% 9.9%
自立訓練(機能訓練) 13.8% 13.4% 9.8% 8.0%
自立訓練(生活訓練) 13.8% 13.4% 9.8% 8.0%
就労選択支援 10.3% 10.1% 8.6% 6.9%
就労移行支援 10.3% 10.1% 8.6% 6.9%
就労継続支援A型 9.6% 9.4% 7.9% 6.3%
就労継続支援B型 9.3% 9.1% 7.6% 6.2%
就労定着支援 10.3% 8.6% 6.9%
自立生活援助 10.3% 10.1% 8.6% 6.9%
共同生活援助(介護サービス包括型) 14.7% 14.4% 12.8% 10.5%
共同生活援助(日中サービス支援型) 14.7% 14.4% 12.8% 10.5%
共同生活援助(外部サービス利用型) 21.1% 20.8% 19.2% 15.2%
児童発達支援 13.1% 12.8% 11.8% 9.6%
医療型児童発達支援 17.6% 17.3% 16.3% 12.9%
放課後等デイサービス 13.4% 13.1% 12.1% 9.8%
居宅訪問型児童発達支援 12.9% 11.8% 9.6%
保育所等訪問支援 12.9% 11.8% 9.6%
福祉型障害児入所施設 21.1% 20.7% 16.8% 14.1%
医療型障害児入所施設 19.1% 18.7% 14.8% 12.7%

参考:厚生労働省 表1-2サービス別加算率(令和6年月以降)

福祉・介護職員処遇改善加算の申請方法

それでは最後に、福祉・介護職員処遇改善加算を適用したい場合、申請書類をいつまでにどこへ提出すればいいのか、令和6年度の兵庫県を例に解説します。

「加算の区分が変わる」「新規に加算を算定する」場合については、次のように定められていました。

提出期限 加算の算定を受けようとする月の前々月末日
提出先 事業所所在地の健康福祉事務所(原則郵送)
提出書類 計画書(別紙様式7・6・2のいずれか)

体制届等

居宅系サービス、短期入所、共同生活援助は正副2部を作成(副本は申請者保管)

日中活動・施設系サービス、障害児は正1部、副2部を作成し、正副各1部を提出(副1部は申請者保管)

参考:兵庫県|福祉・介護職員の処遇改善について(加算)

また、実績報告については7月末までに、事業所所在地の各健康福祉事務所へ提出することとされていました。(神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、明石市に所在の事業所については各市に提出)

令和7年度についても、基本的には上記と同じ要領で申請するものと考えられます。

福祉・介護職員処遇改善加算の申請・報告は専門家に相談

福祉・介護職員処遇改善加算は令和6年度から令和7年度にかけて大きく改正され、申請・報告を自分たちで対応できるか不安に感じている方もいるでしょう。計画書・報告書の提出などは毎年必要になり、書類準備の手間も少なくありません。

サービス提供などのコア業務に集中するためには、申請・報告について専門家に委託したほうがいいでしょう。

また、福祉・介護職員処遇改善加算で得た金銭の支給回数・時期などは事業者の判断に任されていますが、その使い道は給与・賞与・一時金・法定福利費(社会保険料)などの処遇改善に充てなければなりません。加算額をどのように支給すればいいのか迷った場合も、やはり専門家に相談したほうが安心です。

社会保険労務士・行政書士松元事務所では、福祉・介護職員処遇改善加算の算定、還元方法、計画書・報告書などの作成・申請について、顧問契約でサポートしています。

加算要件が複雑で判断できない、申請書・報告書の作成が負担になっているなどの悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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