保育所等訪問支援事業とは、その名の通り、保育所や学校を訪問し、児童やそこで働く職員に支援を行うサービスです。
障がいを持つ児童は、保育所や学校などの集団生活での困りごとが多く、またそこで働く保育士や教員も「どのように接していいのかわからない」という悩みを持っていることがあります。
その子がどのような特性を持っているのか、集団生活の中でどのような場面で適応出来ていないのか、その際、そこで働く職員はどのような対応を取るのが適切なのかを支援するのが保育所等訪問支援サービスです。
どのような児童が対象になる?
保育所等訪問支援サービスの対象となるのは、保育所や幼稚園、学校などの集団生活を営んでいる施設に通っていて、発達や集団生活の適応などについて専門的な支援が必要と認められた障害のあるお子さんです。
障害者手帳を持っていないお子さんでも対象となります。
「必要」と認められるには、まず保護者の方が市町村の窓口へ相談に行き、そこで、具体的に集団生活でどのような様子なのか、困っていることは何か、などのヒアリングを受けて判断されます。自治体が支援が必要と認めた場合には「支給決定」がされ、お子さんに受給者証が交付されます。
受給者証には利用できるサービス(今回の場合は保育所等訪問支援)、利用できる支給量(児童の支援の必要性、緊急度などにより、月〇回)が記載されています。
まだ受給者証を持っていないお子さんについて、相談に来られる保護者の方も多いので、事業所で一連の流れを案内してあげると利用開始までがスムーズです。
「保育所等」とは?
具体的にどのような施設に通っているお子さんが対象になるかを説明します。
未就学児の場合
保育所、幼稚園、認定こども園
就学時の場合
小学校、特別支援学校、学童(放課後児童クラブ)
その他の施設も、市町村が「集団生活の場である」と認めた場合は対象となることがあります。
提供するサービスの内容
- お友達と上手く遊ぶことができない
- ずっと立ち歩いて話を聞くことが難しい
- ストレスのせいか自傷や他害行為がある
など、まずは保護者からの相談をヒアリングすることから始まります。
既に受給者証の交付を受け、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している児童の場合は、相談支援事業所が相談窓口となっている場合がありますので、相談支援事業所から利用について相談を受けることもあるでしょう。
保護者・相談支援事業所・訪問予定先(保育所や学校など)と事前に話し合いの場を持ち、その内容に基づいて具体的にどのような支援が必要かを決め、「保育所等訪問支援計画」を作成します。計画の内容を保護者や相談支援事業所に説明し、同意を得た後、サービスを開始します。
実際に訪問先へ訪問支援員が訪れ、児童を観察し、困りごとや支援の必要性を判断しながら、児童との関わり方を訪問先の職員へ支援・手助けします。
その他、特性上必要な環境の配慮などを伝えたり、行事の前にどのような点に配慮すればいいかをアドバイスしたり、間接的な支援も行います。
保育所等訪問支援の許可(指定)
保育所等訪問支援を行うためには、自治体の許可を受ける必要があります。
この許可のことを「指定」と言い、指定を受けるために「指定申請」という手続きが必要となります。
国から報酬を受けて運営する事業ですので、指定を受けるためには規定の要件を満たしていなければなりません。
1.「人員基準」(=人の要件)
保育所等訪問支援の人員基準は、下記のように定められています。
➀管理者
保育所等訪問支援事業の管理業務を行う人員を配置する必要があります。
児童発達支援管理責任者や訪問支援員を兼務することもできますが、その場合は他の事業との兼務は不可となりますので注意が必要です。
②児童発達支援管理責任者 1人以上
他の事業との兼務がない人員を配置する必要があります。
③訪問支援員 必要な員数
訪問支援を行うために必要な人数を配置するよう定められています。
具体的には、指定を行う自治体により異なります。
訪問支援員は、児童指導員、保育士、理学療法士、作業療法士、心理担当職員などの資格が必要です。
2.「設備基準」(=場所の要件)
保育所等訪問支援を行う場所については、次のような要件を満たす必要があります。
➀事務室
訪問支援に関する必要な書類を作成したり、利用児童に関する個人情報を安全に保管するために必要なスペースです。
主に必要な備品は、机、椅子、パソコン、電話機、複合機、鍵のかかる書庫などです。
②相談室
利用申し込みの受付をしたり、保護者や関係者との面談を行うため、プライバシーの守られるスペースが必要です。
個室が望ましいとされていますが、パーテーションなどで区画し、談話が漏洩しないよう配慮すれば認められることもあります。
主に必要な備品は、面談のできる設備(例:机・椅子、応接セットなど)です。
指定を受けるための流れ
➀会社設立
保育所等訪問支援を始めるためには、まず会社を設立する必要があります。
指定は個人名義では受けることができず、「法人」に対してしか下りないため、まずは会社設立の準備を始めることになります。
法人の形態については決まりはありませんので、「株式会社」「合同会社」「一般社団法人」「特定非営利活動法人(NPO法人)」などから、ご自身のスタイルに合った形態を選び、設立を進めます。
②物件や人材探し
基準上必要な職員の募集や採用活動、物件探しなど、具体的に準備を進めます。
ちなみに、指定申請を行う際、職員についてはまだ入社していなくても問題ありません。開設日までに採用することが内定していれば申請は可能です。
物件については、申請の際に契約済みの賃貸借契約書を確認されること、備品や設備がそろった状態の写真を添付することから、既に契約済みでなければなりません。
③事前相談・事前協議
指定申請を行う前に、自治体にあらかじめ申請の概要を伝え、要件に適合しているのかを確認します。
物件、人員がだいたい決まっていれば協議できます。
④本申請(指定申請)
協議で問題がなければ、指定申請書類を作成し、自治体に提出します。
⑤審査・補正期間(1か月半~2か月)
申請書類を自治体が審査します。審査段階で補正が出てきたら、その都度書類の訂正や追加資料の提出を行う必要があります。また、自治体によっては提出した写真通りの設備がそろっているのか、現地確認にくる場合もあります。
⑥指定
審査が無事終われば、「指定通知書」が交付されます。これが許可証となり、事業所番号が記載されています。
自治体にもよりますが、指定は原則毎月1日付で発行されることが多いです。
専門家によるサポート
当事務所では、下記のようなサポートを行っております。
会社設立に必要な相談・書類作成・定款の電子認証
法人の形態や許可を受ける上で必要な文言などを相談しながら、設立に必要な書類を作成いたします。
指定申請の代行
自治体との事前協議・申請書類作成・補正や質問などのやり取り・現地確認の立ち合いを
全て行っております。指定が下りるまで、一式お任せいただけます。
平成17年の開業以来、不許可事例は1件もありませんので、安心してご相談ください。