保育所等訪問支援サービスの報酬・加算について解説!

保育所等訪問支援サービス(保育所等訪問事業)は、児童発達支援や放課後等デイサービスと同じ「障害児通所支援」の一つです。

サービス事業者が保育所などに訪問し、”障害児”が”障害児以外の児童”との集団生活に適応できるよう専門的な支援をしつつ、その他必要な支援を提供します。

最近では児童発達支援や放課後等デイサービスを運営する事業者が、新たに保育所等訪問サービスを始める例も増えていることが特徴です。

そこでこの記事では、事業所として知っておきたい保育所等訪問サービスの報酬・加算について解説します。保育所等訪問サービスへの参入を検討している方、サービス提供を始めたばかりの方は、ぜひ参考にしてみてください。

保育所等訪問支援とは

保育所等訪問支援サービスは「障害児通所支援」の一つで、その提供サービスは子どもに対して直接支援する「直接支援」と、施設の先生方の相談に応じる「間接支援」の2つに大別されます。

冒頭で触れたとおり、保育所等訪問支援サービスは”障害児”が”障害児以外の児童”との集団生活に適応できるようサポートする役割を担っていることが特徴です。

日本は2013年に「障害者の権利に関する条約」を批准し、障害のある人もない人も共に暮らす社会の実現を目指していますが、そのためには保育所等訪問支援サービスの充実も欠かせません。そのため国は、保育所等訪問支援を全国的に普及させることを目指しています。

参考:厚生労働省|保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書

保育所等訪問支援サービスの報酬・加算について知るために、事業内容や人員配置基準・設置基準についてさらに詳しく見ていきましょう。

訪問先

さて、 「保育所等」という名称ですが、実は保育所等訪問支援は小学校なども対象です。

  • 保育所・認定こども園・幼稚園
  • 小学校・中学校・高等学校
  • 特別支援学校
  • 乳児院
  • 児童養護施設
  • その他児童が集団生活を営む施設 として、地方自治体が認めたもの

ただし保育所等訪問支援は、これら訪問先施設からではなく、あくまでも保護者からの依頼に基づく事業です。保護者から「子どもが友だちとうまく遊べていない」「授業中に離席してしまう」などの悩みを相談された場合に、上記の訪問先施設と協力して課題解消に取り組みます。

対象児

保育所等訪問支援を利用できるのは、上記訪問先施設などに在籍している18歳までの児童です。

発達障害診断・障害者手帳などの有無に関わらず、集団での生活に適応するために専門的なサポートが必要だと考えられる場合には利用できます。

人員配置基準

保育所等訪問支援を運営するための人員配置基準は次のとおりです。

管理者 1名
(他事業所の管理者と兼務可能)
児童発達支援管理責任者 1名以上
(児童発達支援・放課後等デイサービスとの兼務可能)
訪問支援員 1名以上
(障害児支援に関する知識・経験を有する児童指導員・保育士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)

設置基準

保育所等訪問支援の設置基準は次のとおりです。

  • 支援事業運営に必要な広さを有する区画(受付・相談室・事務室など)
  • 衛生管理備品や支援提供に必要な教具・教材などの備品

大がかりな設備は必要ないため、児童発達支援や放課後等デイサービスを運営する事業者が取り組むことも可能でしょう。

基本報酬の考え方

さて、保育所等訪問支援事業は児童への直接支援だけでなく、訪問先施設のスタッフに対する技術的指導の要素も大きい点が特徴です。

そして集団適応の状況に応じ、支援にかかる時間が特定できないため、支援1回ごとに基本報酬が定められています。

この1回あたりの基本報酬については、令和6年に「1071単位/回」と改定されました。

改定前(令和5年度以前) 改定後(令和6年度以降)
1035単位/回 1071単位/回

なお、支援の提供時間は30分以上が基本とされていますが、周囲の環境に慣れるために支援時間を短縮する必要がある等の理由を市町村が認めた場合には、30分未満の支援についても基本報酬を算定可能です。

保育所等訪問支援で利用できる加算制度

保育所等訪問支援を提供する場合、基本報酬以外にさまざまな加算制度を利用できます。代表的な加算は次のとおりです。

  • 訪問支援員特別加算
  • 初回加算
  • 家庭支援加算(令和6年改定で新設)
  • ケアニーズ対応加算
  • 多職種連携支援加算(令和6年改定で新設)
  • 強度行動障害児支援加算(令和6年改定で新設)
  • 関係機関連携加算
  • 利用者負担上限額管理加算
  • 福祉・介護職員等処遇改善加算

それぞれ詳しく見ていきましょう。

訪問支援員特別加算

訪問支援員特別加算は、障害児の支援経験がある作業療法士・理学療法士などの専門性の高い職員を配置し、その当該スタッフが訪問支援を直接実施する場合に適用されます。

区分 単位 概要
訪問支援員特別加算(Ⅰ) 850単位/日 業務従事10年以上、または保育所等訪問支援等の業務従事5年以上の職員
訪問支援員特別加算(Ⅱ) 700単位/日 業務従事5年以上10年未満、または保育所等訪問支援等の業務従事3年以上の職員

初回加算

児童発達支援管理責任者が、初回(または初回の属する月)に訪問先との事前調整やアセスメントに同行した場合、初回加算の対象となります。加算数は200単位/月です。

家庭支援加算(令和6年改定で新設)

支援利用児の家族(きょうだい含む)に対して個別もしくはグループでの相談援助等を実施した場合、家庭支援加算の対象となります。これは令和6年改定で新設された加算制度です。

区分 実施方法 加算単位数 備考
家族支援加算(Ⅰ) 居宅訪問(1時間以上) 300単位/回 個別、月2回を限度
居宅訪問(1時間未満) 200単位/回
事業所等での対面 100単位/回
オンライン 80単位/回
家族支援加算(Ⅱ) 事業所等での対面 80単位/回 グループ、月4回を限度
オンライン 60単位/回

ケアニーズ対応加算

ケアニーズ対応加算は、先述した「訪問支援員特別加算」の対象となる職員を配置し、さらに著しく重度の障害児や医療的ケア児に対して支援を行った際に120単位/日が加算されるものです。

多職種連携支援加算(令和6年改定で新設)

多職種連携支援加算も令和6年改定で新設された制度で、「訪問支援員特別加算」の対象となる訪問支援員を含む、職種の異なる複数人で連携して訪問支援を行った場合に対象となります。加算単位数は200単位/回で、月1回が限度です。

強度行動障害児支援加算(令和6年改定で新設)

強度行動障害児支援加算も令和6年改定で新設された制度です。これは強度行動障害支援者養成研修(実践研修)を修了した職員を配置し、判定基準20点以上の強度行動障害を有する児童に対し、作成した支援計画シートに基づく支援を実施した場合に対象となります。

加算単位数は200単位/日です。

関係機関連携加算

関係機関連携加算は、「訪問先施設」や「利用児童の支援に関わる関係機関」と、会議などで情報連携をした際に加算されます。加算単位数は150単位/回で、月1回が限度です。

利用者負担上限額管理加算

利用者負担上限額管理加算はその名のとおり、事業所が利用者負担額合計額の管理を行った場合に加算されます。加算単位数は150単位/回です。

福祉・介護職員等処遇改善加算

福祉・介護職員等処遇改善加算は、一定基準に適合する賃金改善などの処遇改善に取り組む事業所が対象の加算制度です。

福祉・介護職員等処遇改善加算が適用されると、基本報酬に加算減算を加味した「1か月の総報酬額」に、「処遇改善加算の加算率」をかけた加算額を取得できます。加算額はサービス区分によって異なりますが、保育所等訪問支援の加算率は次のとおりです。

区分 加算率 要件
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) 所定単位数の12.9% 加算(Ⅱ)の要件に加え、経験技能のある福祉・介護職員を事業所内で一定割合以上配置する
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) 適用なし 加算(Ⅲ)の要件に加え、次を満たすこと

● 改善後の賃金年額440万円以上が1人以上
● 職場環境の更なる改善、見える化を実施

福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) 所定単位数の11.8% 加算(Ⅳ)の要件に加え、資格や勤続年数などに応じた昇給の仕組みを整備していること
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) 所定単位数の9.6% ● 本加算の1/2以上を月額賃金の改善に充てていること(旧福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算の未算定事業所に係る令和7年度末までの経過措置あり)
● 職場環境の改善を実施していること
● 賃金体系等の整備や研修を実施していること

なお、福祉・介護職員等処遇改善加算については下記記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:福祉・介護職員処遇改善加算とは?要件や計算方法を解説!

保育所等訪問支援が対象となる減算制度

さて、保育所等訪問支援の運営にあたっては、加算制度だけでなく減算制度についても知らなければなりません。いくつか代表的な減算制度について紹介します。

減算制度 概要 減算単位数
個別支援計画未作成減算 保育所等訪問支援計画が作成されずにサービス提供されていた場合、当該月から当該状態が解消されるに至った月の前月までの間 適用1~2か月目:所定単位数の70%を算定

適用3か月目以降:所定単位数の50%を算定

児童発達支援管理責任者欠如減算 指定基準に定める人員基準を満たしていない場合、その翌々月から人員基準欠如が解消されるに至った月までの間 適用1~4か月目:所定単位数の70%を算定

適用5か月目以降:所定単位数の50%を算定

自己評価結果等未公表減算 義務付けられている自己評価結果等の公表が未実施の場合 所定単位数の85%を算定
身体拘束廃止未実施減算 身体拘束等の適正化を図る措置を講じていない場合 所定単位数の1%を減算
虐待防止措置未実施減算 次の基準を満たしていない場合

● 虐待防止委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
● 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
●上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと

所定単位数の1%を減算
業務継続計画未策定減算 感染症若しくは非常災害のいずれか、または両方の業務継続計画が未策定の場合(令和7年4月から適用) 所定単位数の1%を減算
情報公表未報告減算 情報公表制度に基づく報告が未実施の場合 所定単位数の5%を減算

まとめ

保育所等訪問支援サービスを新たに開始する場合、適切に報酬計算するためには、これら多数の加算・減算を理解する必要があります。

しかし令和6年に改定・新設された制度も多く、すべてを適切に理解することは難しいでしょう。

児童支援などのコア業務に集中するためにも、これら報酬に関わる業務は専門家に委託するのがおすすめです。社会保険労務士・行政書士松元事務所では、保育所等訪問支援事業者からのご相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。福祉・介護職員処遇改善加算の活用方法についてご相談いただくことも可能です。

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